この記事で分かること
- 業務の仕組み化は「AIツール」と「DXツール」を分けて考える理由
- ツールを選ぶ前に決めたい3つの判断軸
- 複数ツールをまたいで使い続ける仕組みづくりの位置づけ
- 社内情報をNotionに集約し、AIで回せるようにした実施イメージ
読了時間:約10分

監修:
みちしるべコンサルティング
代表
生井 聖人(なまい まさと)
マーケティング歴10年。中小企業のAI×DX支援を専門に、感覚経営から数字経営への移行を伴走支援している。

AIを取り入れたいと思ったとき、まず「AIツール おすすめ 中小企業」で検索した方は多いのではないでしょうか。
ツールがずらりと並んだ記事を開いて、読み終えても、結局どれを選べばいいのか分からず、そっと閉じてしまう。
そんな声を、私(生井)は現場でよく耳にします。
つまずく原因は、ツールの数でも情報量でもありません。
「選ぶ前に決めておくこと」の順番が抜けているからだと感じています。
この記事では、中小企業のAI・DXツールを「おすすめ一覧」から選ぶのではなく、その手前で決めるべき判断軸を整理します。
読み終えるころには、自社が次に何を確かめればいいかが見えてくるはずです。
AI・DXツールの「おすすめ」を探すと、中小企業が迷子になりやすい理由
おすすめ一覧で迷子になりやすいのは、困りごとははっきりしているのに、それをAIのどこに当てるかが見えていないからです。
人手不足は、企業規模を問わず中小企業の共通課題で、省力化や生産性向上は経営課題の上位に挙がっています。
つまり、困っていること自体は、たしかにあるわけです。
ところが、AIを導入するときに中小企業が最も足りないと答えたのは「成功事例や活用事例などの情報」で、83.3%にのぼりました。
次いで多かったのが「適切なベンダーや製品を選定する情報」で、79.8%です。
(出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月))
使い方の手本も、選び方の情報も足りていない状態です。
これでは、おすすめ一覧を見ても、自社のどこに効くのか像を結びません。
結果として、良さそうなAI・DXツールだけが増え、使われないまま費用が残りがちです。
だからこそ、一覧を見る前に「どの困りごとに当てるか」を決める順番が先だと考えています。
中小企業のAI×DXに必要なのは、「DXツール」と「AIツール」
中小企業のAI×DX(AXとも呼ばれる、AIで業務を変えていく取り組み)に必要なのは、性格の違う2種類のツールです。
DXツールと、AIツールです。
DXツールは、紙や手作業でやっていた業務をデジタルにして、いつでも取り出せる形に整える土台です。
言いかえれば、「AI・DXツール」の“DX(デジタル化・仕組み化)”にあたる部分です。
AIツールは、その土台の上で、考えたり作業したりを助ける働き手です。
土台が散らかったまま働き手だけ増やしても、力を出しきれません。
DXツールでできること(デジタル化の土台)
DXツールは、社内に散らばった情報を1か所に集め、いつでも取り出せる状態にするのが役割です。
代表的なものを挙げると、次のようになります。
- Money Forward:
会計・請求・経費・給与を整える - kintone:
顧客管理・案件管理・申請業務を整える - Notion:
情報・マニュアル・議事録・進行管理を整える - Google Workspace:
連絡・共有・会議の土台を整える
メールや文書作成をMicrosoft中心で回している会社では、Google Workspaceの代わりにMicrosoft 365が土台になることもあります。
弊社の支援でも、この4つは「AIを乗せる前の土台」として組み合わせることが多いです。
派手さはありませんが、ここが整っているかどうかで、後のAI活用の効きが変わります。
AIツールでできること(土台の上で働く)
AIツールは、整ったデータがあるほど力を発揮します。
データが手元になくても使えますが、社内の情報が1か所にまとまっていると、書き分けや検索の精度が上がります。
たとえば自社の情報を1つにまとめておくと、集客用の宣伝文を書くときに、AIが過去のデータを読み取り、響く表現とそうでない表現を書き分けてくれます。
使いみちは幅広く、文章の要約、議事録づくり、問い合わせへの下書き、たまったデータの検索などです。
どの土台にも乗せやすい汎用のAIツールとしては、ChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilot、Claudeなどがよく使われています。
相性でいえば、Google WorkspaceならGemini、Microsoft 365ならCopilotのように、今ある土台に合わせて選ぶと、現場になじみやすくなります。
理由は、これらのAIが土台と同じ提供元でつくられ、ふだん使う画面の中にそのまま組み込まれているからです。
たとえばGeminiはGmailやGoogleドキュメントの中身をそのまま読み取れますし、CopilotはWord・Excel・Teamsの中で動きます。
別途つなぎ込む手間が少なく、いつもの画面のまま使えるので、現場が覚え直さずに済みます。
最近は、ツール自身がAIを持ち始めている
近年は、DXツール自身がAIを取り込む流れも進んでいます。
kintoneは2025年4月に「kintone AIラボ」の提供を始め、蓄積したデータをAIが検索・活用できるようになりました。
(出典:サイボウズ「kintone AIラボでβ版AI機能を提供開始」(2025年4月))
Notionにも、蓄積したナレッジをもとに要約や文章生成を行うNotion AIがあります。
こうした付属のAIは、そのツールの中の作業を軽くするのが得意です。
さらに最近は、指示すると複数のツールをまたいで動く“エージェント型”(AIが自分で手順をこなす使い方)も広がってきました。
土台とAIは順番を厳密に分ける必要はありませんが、土台が整っているほど、AIは力を出しやすくなります。
おすすめを選ぶ前に決めたい3つの判断軸
中小企業のAI・DXツール選びで先に決めたいのは、ツール名ではなく判断軸です。
これがあると、どのおすすめ一覧を見ても、自社の基準でふるいにかけられます。
決めておきたい判断軸は、大きく3つあります。
判断軸1:目的を「時間」か「売上」かで先に決める
最初に決めるのは、そのツールで「時間を浮かせたいのか」「売上を増やしたいのか」です。
実際には、まず“時間”から入る会社がほとんどです。
中小企業がAIを入れる目的でも、いちばん多いのは「業務効率化・作業時間の短縮」で、87.0%にのぼります。
(出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月))
ですから、まずは時間から、で問題ありません。
弊社ではこれを、守りのDX(業務改善)と攻めのDX(集客・リード獲得)と呼んで分けています。
議事録や請求業務を軽くしたいなら、守りのDXツールが起点です。
問い合わせや来店を増やしたいなら、攻めの側から設計します。
まずは時間から始めて、浮いた余力を売上に振り向けていく順番でも構いません。
目的が混ざったまま探すと、どのツールも中途半端に見えてしまいます。
判断軸2:今ある基盤に乗るかで選ぶ
次に見るのは、そのツールが今使っている基盤にちゃんと乗るか、です。
新しいツールを単体で足していくと、データが分かれてしまい、かえって手間が増えます。
たとえば顧客情報がkintoneにあるなら、その上で動くAIや連携を選ぶほうが自然です。
具体的には、こんな使い方です。
- 蓄積した商談履歴を、AIに要約させる
- 「先月の失注案件を理由別に集計して」と会話で聞く
- 顧客情報をもとに、返信メールの下書きを作らせる
1つ増やすたびに、どこかとつながるかを確かめるだけで、無駄な導入がかなり減ります。
判断軸3:使い続けられるか(定着)で選ぶ
最後は、現場が使い続けられるか、という定着の視点です。
高機能でも、担当者しか使えないツールは、その人が抜けた瞬間に止まります。
この不安は、数字にもあらわれています。
帝国データバンクの調査では、生成AI活用の懸念のトップは「情報の正確性」で50.4%、次いで「専門人材・ノウハウ不足」が41.3%でした。
(出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月公表))
課題は「導入するかどうか」より、使いこなす仕組みをどう作るかに移っています。
選ぶ段階から、誰がどう使い続けるかまで見ておくと、定着の失敗を減らせます。
【関連記事】属人化をAIで解消する5ステップ|ベテランの暗黙知を“会社の資産”にする方法
ここまでで全体像がつかめたら、あとは自社のどの業務から当てるかの判断です。

基盤とAIは「組み合わせて」はじめて効く
中小企業のAI・DXツールは、基盤とAIを別々にではなく、組み合わせて考えたときに効いてきます。
土台にデータが整っていれば、AIはそのデータを使って要約や検索、下書きをこなせます。
逆に土台がないと、AIに渡す材料がなく、便利さを感じにくくなります。
実際の中小企業では、会計・顧客・議事録・連絡が、別々のツールに分かれていることがほとんどです。
付属のAIは、それぞれのツールの中では力を出します。
ただ、土台とAIをセットで整えてはじめて、日々の業務が軽くなっていきます。
複数ツールをまたいだ運用と定着、他の中小企業はどこまで進んでいる?
多くの中小企業は、AIを「一部の業務で試す」ところまでは来ていて、複数のツールをまたいで使い続ける段階は、まだこれからです。
中小機構の調査では、AIを導入した中小企業は20.4%でした。
ただし内訳を見ると、「一部の業務で導入」が16.8%で、「全社的に導入」は3.6%にとどまります。
(出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月/全国の中小企業10,000社対象))
つまり、入れてはいるものの、多くは“部分的な導入”で止まっているのが現在地です。
導入している部門にも偏りがあり、総務・管理が68.3%、営業・販売が60.3%と、部門ごとにバラバラに進んでいます。
裏を返せば、ツールも部門も分かれたまま増えていきやすい、ということです。
だからこそ、複数のツールをまたいで判断し、使い続ける段になると、多くの会社が同じ壁に当たります。
これは能力の差ではなく、まだ“型”が共有されていないためだと感じています。
ここが、中小企業のAI・DXツール活用で、いちばん差がつくところだと考えています。
個々のツールにAIが付いても、それらをまたいで「どこから手をつけ、どう回し続けるか」を決めるのは、機能ではなく仕組みの役割です。
弊社ではこの部分を、AIで仕組み化するAI×DXと呼んでいます。
「土台づくり → AIを乗せる → 使い続ける」の流れを、社長一人で回すのは負担が大きいのも実際のところです。
みちしるべコンサルティング株式会社では、集客改善と業務改善の両方を、提案から仕組み化までAIで一気通貫に支援する「経営オペ」を提供しています。
どの基盤を選び、どこにAIを乗せ、どう定着させるか。
その順番を一緒に設計するのが、私たちの役割だと考えています。
【実施イメージ】情報をNotionに集約し、AIで回せるようにした会社
ある支援先(従業員10名ほどの会社)では、散らばっていた社内情報をNotionに一本化し、AIと組み合わせて回せるようにしました。
その結果、議事録づくりは1回30〜40分から約5分になり、情報を探す時間も大きく減りました。
- 議事録・案件の進捗・業務マニュアルが、それぞれ別の場所にあった
- 社内ルールの最新版がどこにあるか分からず、「これで合っている?」の確認が多かった
- 情報を探すだけで時間がかかり、引き継ぎも属人的だった
この状況を整理すると、次のように見えてきました。
- 原因:
情報が個人と各ツールに散らばり、「置き場所」そのものが決まっていなかった - 必要だったアクション:
まず情報の置き場所をNotionに一本化し、その上でAIに読ませて回せる形にすること
一度に全部を変えず、置き場所を集める → 書式をそろえる → AIと連携、の順で進めました。
具体的には、次の3つです。
- 情報の一元化:
議事録・案件・業務マニュアル・コンテンツ・週次月次の数値を、Notionのデータベースに集約した - 議事録の自動化:
会議の録音をNotionに渡し、要約とネクストアクションの抽出まで下書きする流れを用意した - AIとの連携:
Claudeとつなぎ、「先月の数字をカテゴリ別に集計」「未対応の確認事項を出す」など、複数のデータベースをまたいだ集計を会話でできるようにした
これらの取り組みを続けた結果、次のような変化が出ました。
- 議事録の作成時間:
1回あたり30〜40分 → 約5分 - 情報を探す時間:
「あの資料どこ?」がNotion検索で即答でき、マニュアルもその場で更新できるようになった - 引き継ぎ:
属人化が減り、担当者が変わっても回る形になった
改善できた理由は、AIツールを単体で入れたのではなく、情報の置き場所をNotionに一本化してから、その上でAIを動かしたことにあります。
土台がそろっていたため、AIは散らばった資料ではなく、整ったデータベースを読んで、要約や集計を返せるようになりました。
その結果、議事録の清書や「どこにある?」の探し物といった作業そのものが減り、判断に時間を使えるようになりました。
【関連記事】議事録をAIで自動化するには?文字起こし→要約→振り返りまで仕組み化する手順
中小企業のAI・DXツールは、こうして土台から順に組み合わせることで、日々の時間に返ってきます。
ここまで読んだあなたへ
中小企業のAI・DXツール選びは、一覧から正解を当てる作業ではなく、自社の順番を決める作業だと感じています。
順番さえ決まれば、おすすめ一覧は「選ぶための材料」に変わります。
- まず時間を浮かせたい方:
守りのDXツールから、どの業務を軽くするかを決める一歩 - すでに基盤がある方:
その上にどうAIを乗せるかを見極める一歩 - 過去に入れて使われなかった方:
定着の仕組みから作り直す一歩
もし「うちはどこから手をつければいいのか」と感じていたら、まずは公式LINEにご登録ください。
業種と今の状況を教えていただくだけで、「まずはここから」を無料で診断します。
診断では、どの基盤を土台にして、どこにAIを乗せると効きやすいかの初期案をお返しします。
「いきなり相談はまだ早いかな」という方には、サービスの内容がわかる資料もお配りしています。
みちしるべコンサルティング株式会社では、集客改善と業務改善の両方を、提案から仕組み化までAIで一気通貫に支援する「経営オペ」を提供しています。
よくある質問
Q1. AIツールとDXツールは、どちらから始めるとよいですか?
多くの場合、DXツールが先です。
AIは整ったデータの上で力を発揮するため、土台がないと効果を感じにくいからです。
まず「どの業務のデータを整えるか」を決めると、進めやすくなります。
Q2. 中小企業でも、こうしたツールは本当に使われていますか?
はい、中小企業でも広く使われています。
たとえばkintoneは、大企業から中小企業、自治体まで幅広く導入されているツールです。
規模の大小より、自社の業務に合わせて必要な範囲だけ使えるかどうかが大切だと考えています。
Q3. まず1つだけ始めるなら、何がおすすめですか?
「今いちばん時間を取られている業務」から選ぶのがおすすめです。
議事録、請求、顧客管理など、毎回手間がかかっている作業ほど、効果を実感しやすいためです。
全部を一度に変えず、1つに絞るほうが定着しやすい印象があります。
Q4. ツールを入れても定着しないのが不安です。
その不安は自然なもので、実際に多くの企業が同じ課題を挙げています。
定着のコツは、置き場所と使い方のルールを先に決め、担当者一人に依存しない形にしておくことです。
選ぶ段階から「誰がどう使い続けるか」を設計しておくと、失敗を減らせます。
Q5. 費用の目安はどれくらいですか?
ツールの月額はサービスごとに幅があり、使う範囲によって変わります。
大切なのは金額そのものより、「浮いた時間や増えた案件が費用を上回るか」で見ることだと考えています。
Q6. Notion AIやkintone AIのように、ツール自体にAIが付いているなら、それだけで十分ではないですか?
ツール付属のAIは便利で、私たちもおすすめしています。
ただ、その多くは「そのツールの中のデータ」に対して働くものです。
会計・顧客・議事録が別々のツールに分かれていると、それらをまたいだ判断までは、1つのAIだけでは難しいことがあります。
また、AIをどの業務に向け、どう使い続けるかは、機能をオンにするだけでは決まりません。
「どこに使うか」「どう定着させるか」を設計する部分こそ、仕組みづくりの中身だと考えています。
Q7. 顧客情報などをクラウドのツールで管理するのは、セキュリティ的に不安です。
大手も使う主要なツールであれば、基盤そのもののセキュリティは高い水準です。
たとえばNotionやGoogle Workspaceは、国際的な認証(ISO 27001など)を取得し、通信も保存も暗号化されています。
事故の多くは基盤ではなく、公開設定のミスや権限の付けすぎといった「使い方」の側で起きます。
有料プランで権限を最小限にし、公開共有をオフにしておくだけでも、リスクはかなり下げられます。
ただし、マイナンバーやクレジットカード番号などは、一般ツールではなく専用の仕組みで扱うのが安心だと考えています。
まとめ
中小企業のAI・DXツールは、おすすめ一覧から選ぶ前に、自社の順番を決めるのが近道です。
まず「時間か売上か」を決め、今ある基盤に乗るかを確かめ、使い続けられるかで選ぶ。
この3つの判断軸があれば、ツール選びは迷いにくくなります。
大事なのは、PVではなくCV、広告費ではなくROAS、そして売上ではなく利益で見ることだと考えています。
どこから手をつけるか迷ったら、無料診断で一緒に順番を整理するところから始めてみてください。
関連記事|気になるところからどうぞ
いまの関心にいちばん近いものを開いてみてください。






