この記事で分かること
- 「AIを入れても成果が出ない」会社に共通する、本当の原因
- 中小企業のAI活用を「攻め(集客)」と「守り(業務)」で整理する考え方
- 業務を作り直す「AX(AIトランスフォーメーション)」とは何か
- 自社はどちらから着手すればいいか、状況別の判断軸
- 攻めと守りを一緒に進めると、なぜ効果が高まるのか
読了時間:約12分

監修:
合同会社みちしるべ 代表
生井 聖人(なまい まさと)
マーケティング歴10年。中小企業のAI×DX支援を専門に、感覚経営から数字経営への移行を伴走支援している。

「AIを導入してみたけれど、思ったほど成果が出ない」。
そう感じている経営者の方は、少なくありません。
ツールを試したり情報を集めたりしている時点で、行動は十分に起こせています。
うまくいかない原因は、やる気や能力ではなく、たいてい「全体の設計図がないまま、部分的にAIを入れた」ことにあります。
この記事では、中小企業のAI活用を「攻め=売上を増やす」と「守り=足元を固める」の2つに分けて整理します。
自社がどちらの課題を抱えていて、何から手をつければいいか。
その判断軸が見えるところまでを、ゴールにします。
なぜAIを入れても成果が出ないのか?
AI活用がうまくいかない原因は、新しいツールが足りないことではなく、全体を整理する設計がないことです。
まず、足元の数字を見てみます。
帝国データバンクの2026年3月の調査では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。
(出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」2026年3月)
注目したいのは、成果が出る会社と出ない会社の分かれ目です。
PwCの2025年の調査では、期待を上回る効果を出す企業と出せない企業の差は、AIを単なるツールとして使うか、事業の中核に据えて業務そのものの作り直しに踏み込むかにある、とされています。
(出典:PwC Japan「生成AIに関する実態調査 2025春」)
私(生井)の経験上も、ツールを足すより先に「攻め」と「守り」で自社のやることを整理するだけで、迷いがかなり減るという印象があります。
中小企業のAI活用は、どう2つに分けると整理できるのか?
AI活用は、目的で見ると大きく2方向に分かれます。
- 攻めのDX(売上を増やす):
新規の集客から既存客のリピートまで、お客さんを増やし関係を続ける仕組みを、デジタルとAIで強くする - 守りのAX(足元を固める):
日々の業務・資金繰り・人材という会社の土台を、AIや仕組みで安定させる
ここで、守りの「業務を作り直す」部分について、言葉を補足します。
いま多くの中小企業は、AIを文章の作成・要約といった“部分使い”で止まっています。
実際、さきほどの帝国データバンク調査でも、活用業務の最多は「文章の作成・要約・校正」で、懸念の最多は「情報の正確性」が50.4%でした。
(出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」2026年3月)
一方で、成果を出している会社は、AIを文章作成の補助で終わらせていません。
業務の流れそのものを、AI前提で組み直しています。
たとえば、問い合わせ対応を「人が一件ずつ返す」前提から、「AIがまず一次対応し、人は例外だけを見る」前提へ作り変える、といった具合です。
PwCの調査でも、高い効果を出す企業は、AIを業務の一部にとどめず、業務プロセスそのものの再構築にまで踏み込んでいると報告されています。
(出典:PwC Japan「生成AIに関する実態調査 2025春」)
この“作り直す段階”が、近年AX(AIトランスフォーメーション)と呼ばれています。
DXがクラウドなどでデジタルの基盤を整える「環境づくり」だとすれば、AXはその基盤の上でAIを使い、業務や判断を作り直して付加価値を生む段階を指します。
(出典:マネーフォワード クラウド「AX(AIトランスフォーメーション)とは」2025年)
横文字を覚える必要はありません。
「AIを文章作成に使う段階(部分使い)」から「業務そのものを作り直す段階(AX)」へ進むほど、成果が出やすい、と捉えておけば十分です。
攻めのDX(集客)では、何を整えるのか?
攻めのDXは、「お客さんを増やし、関係を続ける仕組みを、まるごと作り直す」取り組みです。
中小企業では、広告は広告会社、SEO(検索対策)は別の業者、SNSは社内の誰か、と担当が分かれていることがあります。
それで問題なく回っている会社もあります。
ただ、担当が分かれるほど、狙う客層やメッセージはズレやすく、努力のわりに成果が積み上がらないことがあります。
攻めのDXで整える対象には、たとえば次のようなものがあります。
- 集客の戦略:
誰に・どんな価値を届けるかを決める - 数値目標(KPI):
問い合わせ数・予約数など、追う指標を1つに絞る - 媒体の統括:
広告・SEO・MEO(地図対策)・SNSを、同じ狙いでそろえる - 受け皿の改善:
LP(申込ページ)・ホームページ・公式LINE - リピート設計:
既存客との関係づくり
これは「全部そろえないといけない」というリストではありません。
自社にいま必要なものを選ぶための、整理の軸として見ていただければ十分です。
ここでAIが効くのは、コンテンツ生成や分析、改善サイクルの高速化です。
ただ、大事なのは「作る量を増やすこと」ではありません。
AIで手数が増えるほど、「誰に・何を届けるか」という判断の重みが増します。
価値は、手数から判断へ移っていくと考えると分かりやすいかもしれません。
弊社では、この攻め(集客)の仕組みを戦略から実行・改善までAIごと構築する支援を「CMO AI構築」と呼んでいます。
守りのAX(業務)では、何を整えるのか?
守りのAXは、業務・お金・人という会社の土台を、AIで安定させる取り組みです。
大きく3つに分けて整理します。
①業務をAIで標準化・自動化する
人手不足や、ベテランしか分からない属人化といった「現場が回らない」悩みに効く部分です。
- 業務フローの可視化(何にどれだけ時間がかかっているかを見える化する)
- AIツールの導入と、現場に根づくまでの定着支援
- 業務の自動化と、ダッシュボードによる数値の見える化
これが回ると、「担当者がいないと止まる」状態から「誰でも回せる」状態へ、「営業時間内だけ」から「仕組みが24時間動く」状態へと変わっていきます。
②資金繰りを整える(投資の負担を抑える選択肢として補助金もある)
守りで先に整えておきたいのが、お金まわりです。
業務を見直すにも、AIを入れるにも、最初はどうしてもお金がかかります。
大事なのは、月々のキャッシュフローを無理のない範囲で保ちながら、回収できる見込みのある投資から、小さく順番に始めることだと感じています。
いきなり全部を変えようとしない、というだけで、資金面のリスクはかなり下げられます。
そのうえで、自社の負担を抑える選択肢の一つとして、補助金があります。
補助金は「もらうこと」が目的ではなく、進めようと決めた投資の負担を下げる手段です。
たとえば、よく知られた「IT導入補助金」は、2026年から「デジタル化・AI導入補助金2026」へ名称が変わり、交付申請の受付が始まっています。
(出典:中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026」)
人手不足に向けた設備投資には、中小企業省力化投資補助金もあります。
一般型は第7回公募が2026年6月5日から始まっており、2026年3月の制度改定で従業員20人以下の事業者の上限が引き上げられました。
(出典:中小企業省力化投資補助金 公式サイト/2026年6月時点。公募回・上限は年度で変わるため、最新は公式サイトでご確認ください)
私(生井)の経験上、補助金から入ると「採れたから何かやる」になりがちで、現場に残らないケースが多い印象があります。
先に「何を整えたいか」を決め、そこに当てはまる補助金があれば使う、という順番のほうが、結果として手元にお金も仕組みも残ります。
補助金の対象範囲・選び方を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
関連記事:AI導入で使える補助金とは?ChatGPTは対象?制度の選び方を解説
③SNS採用で“会社のファン”を集める
人手不足は、多くの中小企業にとって守りの最重要テーマです。
普通の求人広告は「条件で集めて、条件で去られる」になりがちで、定着までつながりにくい面があります。
そこで有効なのがSNS採用です。
自社のSNSで会社の雰囲気・働く人・価値観を日ごろから発信すると、共感した人が応募してくるため、入社後のミスマッチが起きにくくなります。
ここで気づいてほしいのは、SNS採用は攻めで培ったSNS発信の力を、人材(守り)に活かしているという点です。
攻めと守りは別物に見えて、実は地続きです。
弊社では、この守り(業務改善)の仕組みをAIごと構築する支援を「CDO AI構築」と呼んでいます。
攻めと守り、自社の課題がどちらに近いか見えてきたら、あとは着手の順番です。

攻めと守り、どちらから着手すればいいのか?
「攻めと守り、どっちが先か」に唯一の正解はありません。
判断軸は、いま自社が一番困っていることが、どちらに近いかです。
| いまの悩み | 着手しやすい方向 |
|---|---|
| 売上はあるが利益が残らない | 守り(業務のムダを減らす) |
| 新規の集客が頭打ち | 攻め(集客の仕組みを作る) |
| 既存客が続かない・リピートが弱い | 攻め(関係づくり・LINE活用) |
| 人手不足で現場が回らない | 守り(業務の標準化・自動化) |
| 採用してもすぐ辞めてしまう | 守り(SNS採用で定着を高める) |
| 投資したいが資金が不安 | 守り(資金繰りを整える) |
ポイントは、ツールを選ぶ前に「自社はどちらの課題か」を先に見極めることです。
ここがあいまいなまま流行のツールから入ると、せっかくの投資が点で終わってしまいます。
順番を決めるだけでも、最初の霧はかなり晴れます。
攻めと守りは、なぜ一緒に進めると効果が高まるのか?
攻めと守りは、別々に進めても成果は出ますが、つないで進めるほど効果が高まります。
理由は、両者がもともと地続きだからです。
攻めで生まれた資産(発信力・たまった顧客の声・広告のデータ)は、そのまま守りに使えます。
逆に、守りで業務が整って余力が生まれれば、その分を攻めに回せます。
たとえば、先ほどお話ししたSNS採用は、まさにこの考え方そのものです。
集客のために磨いたSNS発信の力(攻め)を、人材の採用(守り)にも転用しています。
ところが、攻めと守りを別々の担当に任せると、この受け渡しが起きにくくなります。
大手人材会社パソナの解説では、部門ごとに情報や仕組みが分断される「サイロ化」が、判断の遅れ・重複作業・顧客体験の低下を生む弊害として整理されています。
(出典:パソナ「サイロ化がもたらす弊害と解消方法」2026年)
データ活用支援を手がけるINCUDATAの解説でも、部門どうしが連携している組織ほど、それぞれの成果が最大化され、全体としての競争力につながりやすい、と整理されています。
(出典:INCUDATA Magazine「部門間連携とは」2025年)
さらにPwCの調査では、AI活用で成果を出すかどうかは、経営トップの関与と、責任の所在がはっきりした推進体制があるかどうかに左右される、とされています。
(出典:PwC Japan「生成AIに関する実態調査 2025春」)
弊社の支援経験でも、攻めと守りを同じゴールで束ねる役割を置けた会社ほど、施策がつながって成果が続くと捉えています。
社内で言えばCOO(実務全体を束ねる役割)に近い立場です。
攻めと守りを同じゴールに向けて束ねるから、施策どうしが噛み合います。
弊社では、攻め(CMO AI構築)と守り(CDO AI構築)を、まずは片方ずつでも始められるようにしつつ、両方を1人のCOOが統括する形を「経営オペ」として提供しています。
これは道具を入れて終わりにする話ではなく、集客から業務までを1つの設計図でつなぐ、AI×DXの考え方そのものです。
この「COOの役割を外部の伴走で担う」という考え方については、別の記事で詳しく整理しています。
関連記事:中小企業のためのCOO代行とは|AIで仕組み化する攻めと守りの右腕
【成功事例】攻めと守り、それぞれの業務での改善例
みちしるべがこれまで関わってきた支援(約50社、年間約1億円規模の広告運用)の中から、攻めと守りそれぞれの改善例を挙げます。
まずは、守り(業務)をAIで効率化した例です。
広告レポートの自動生成(広告運用)
- 課題:
22社分の広告レポート作成に、毎月440分かかっていた - 施策:
分析・改善提案・次月アクションまでを、AIエージェントで自動生成するようにした - 変化:
作成時間が440分から約1分になり、作業時間を99.7%削減しました。空いた時間を改善設計にあてられるようになりました
LPと広告の監視(見落とし防止)
- 課題:
17〜20社分の広告停止・LP停止の確認に、手作業で時間がかかっていた - 施策:
監視エージェントを導入し、異常だけが知らされる仕組みにした - 変化:
確認作業が約1分で済むようになり、停止の見落としを防げるようになりました
議事録づくり(会議記録)
- 課題:
議事録の作成に、1回あたり約30〜40分かかっていた - 施策:
記録を自動化し、Notionへ自動で集約して一覧で振り返れるようにした - 変化:
内容を確認する5分前後で済むようになりました
次に、攻め(集客)で成果が出た例です。
外構・エクステリア工事会社(高単価受注)
- 課題:
1件 約200万円の高単価工事を、安定して受注する導線がなかった - 施策:
WEB集客の仕組みを整え、継続的に受注が入る流れをつくった - 変化:
投資額 約500万円に対し、受注額 約8,600万円(投資対効果 約17倍)になりました
訪問看護ステーション(採用)
- 課題:
採用が難しい訪問看護師を、低コストで集めたかった - 施策:
求人広告とSNS運用を組み合わせ、共感で集める導線をつくった - 変化:
採用広告費 約10万円で内定承諾8名(1名あたり 約1.3万円)。約2ヶ月で応募20名を獲得しました
ペット火葬事業(数字で判断する経営へ)
- 課題:
感覚に頼った経営で、必要な広告予算が読みにくかった - 施策:
件数予測ダッシュボードをつくり、年間広告予算 約350万円規模のKPIをワンビューで可視化した - 変化:
必要な広告予算を自動で計算でき、数字で判断できる経営に変わりました
守りの例は攻めで使う広告やLPを回し続ける土台になり、攻めの例はその土台があるから伸ばせています。
攻めと守りを別々にせず、同じゴールでつないだことが、これらの改善が続いた理由でした。
ここまで読んだあなたへ
ここまで読んで、「攻めと守り、自社はどっちが先か」が少し見えてきたのではないでしょうか。
そこから先は、自社の数字に当てて優先順位をつける作業です。
これは売り込みではなく、進む道を一緒に整理する場として、無料診断をご用意しています。
公式LINEで、業種と「いま一番の悩み」を1つ送っていただくだけで大丈夫です。
攻め・守りのどちらから着手すべきか、今使える補助金、最初の一手までを、具体的にお返しします。
いきなり全部を変える必要はありません。
攻めだけ、守りだけ、片方からでも始められます。
「相談はまだ早いかな」という方には、サービスの内容がわかる資料もお配りしています。
みちしるべコンサルティング株式会社では、集客改善と業務改善の両方を、提案から仕組み化までAIで一気通貫に支援する「経営オペ」を提供しています。
よくある質問は?
Q1. 攻めと守り、結局どちらから始めるべきですか?
いま一番痛みが大きいほうからをおすすめしています。
利益が残らないなら守り、新規が増えないなら攻め、という見極めが入口になります。
Q2. AX(AIトランスフォーメーション)とDXは、何が違いますか?
DXはデジタルの基盤を整える段階、AXはその上でAIを使って業務や判断を作り直す段階、と整理されています。
守りの業務改善は、AXに重なります。
Q3. 小さな会社でも、両方に手をつけられますか?
いきなり両方でなくて大丈夫です。
片方から始め、補助金で投資の負担を抑えながら、順番に広げる進め方が無理ありません。
Q4. 攻めと守り、両方まとめて頼まないとダメですか?
いいえ、攻めだけ(CMO AI構築)、守りだけ(CDO AI構築)でも始められます。
片方で土台をつくってから、もう片方へ広げる進め方もできます。
Q5. 費用はどのくらいかかりますか?
内容や範囲によって変わります。
まずは無料診断で現状をうかがったうえで、無理のない進め方と費用感をお伝えします。
まとめ
中小企業のAI活用でつまずく原因は、ツールではなく全体設計の不在にあると考えています。
最初の一歩は、自社のやることを「攻め(集客)」と「守り(業務)」で棚卸しすることです。
痛みの大きいほうから着手の順番を決め、必要な範囲だけAI・補助金を当てはめる。
売上ではなく利益、PV(閲覧数)ではなくCV(成果)で見ながら、攻めと守りを1つの設計図でつなぐ。
まずは自社の現状を、無料診断で一緒に見える化するところから始めてみてください。






