この記事で分かること
- 実名で公開された企業が、AI×DXで業務をどう改善したか
- 小売・飲食・建設・製造・クリニックの業種別の始めどころ
- 弊社が中小企業の現場で支援した、業務改善の事例
- AIを入れて終わりにせず、仕組みにして定着させる大切さ
読了時間:約11分

監修:
合同会社みちしるべ 代表
生井 聖人(なまい まさと)
マーケティング歴10年。中小企業のAI×DX支援を専門に、感覚経営から数字経営への移行を伴走支援している。

毎月くり返す、請求書の入力。
会議のあとの、議事録づくり。
似たような問い合わせへの、同じような返信。
こうした作業に、毎日少しずつ時間を取られていませんか。
「AIを使えば楽になるとは聞くけど、
自社のどの仕事に使えばいいかが見えてこない。」
そんな声を、中小企業の経営者の方からよくうかがいます。
この記事では、実名で公開された企業のAI×DX事例と、弊社が中小企業の現場で支援した事例を取り上げ、「自社の業務なら、どこに当てられるか」をセットでお伝えします。
まず実例を知ることが、業務改善への一番の近道になる
中小企業のAI活用は、まだ始まったばかりです。
情報通信総合研究所の調査では、従業員300人未満の企業で、社内にAIを導入できているのは10社に1社ほどでした(2025年7月時点)。
(出典:情報通信総合研究所「企業における生成AI導入の現状と展望」(2025年9月公表))
そして、導入していない理由でもっとも多かったのが「利用用途・シーンがない」、つまり”何に使えばいいか分からない”という答えでした(41.9%)。
裏を返せば、使い道さえ見えれば、動き出せる会社がたくさんあるということです。
だからこそ、実際の企業がどこにAIを使ったのか、その実例を知ることが近道になります。
私自身、これまで中小企業のAI×DXを支援してきましたが、最初の一歩は議事録の要約や文章の下書きなど、驚くほど身近な業務から始まることがほとんどだと感じています。
なお弊社では、集客を伸ばす攻めのAIを「CMO AI」、社内の業務を効率化する守りのAIを「CDO AI」と呼び分けています。
この記事で扱うのは、後者の守り、つまり業務改善の事例です。
集客や売上を伸ばす攻めの事例は、別の記事にまとめています。
【関連記事】中小企業のAIマーケティング事例|実際の企業の使い方と、業種別の活かし方を解説
AI×DXの業務改善でできることは、大きく3つに分かれる
中小企業がまず取り組みやすいAI×DXの業務改善は、大きく3つに分けられます。
どれも特別な設備がいらず、今日から小さく試せるものです。
① 文章・事務の「くり返し作業」を任せる
毎日のように発生する、書く・まとめる・打ち込む作業を、AIに下書きさせる使い方です。
- 会議の録音から、議事録の下書きを作る
- お客様や取引先へのメールの、返信文のたたき台を作る
- 日報や報告書、提案書の下書きを作る
- 紙のレシートや書類を読み取って、数字をデータに打ち込む
② たまった「数字」を読み解く
社内にたまっている数字を、AIに整理・分析させて、判断の材料にする使い方です。
- 顧客リストや売上データから、傾向や追いかける優先順位を読み取る
- 過去の売上や天気から、来月どれくらい売れそうかを見立てる(需要予測)
- アンケートや口コミをまとめて、改善のヒントを洗い出す
③ ベテランの「段取り」を、会社の型にする
特定の人にしかできない仕事を、誰でも回せる形に変える使い方です。
- うまくいったAIへの指示(プロンプト)を共有し、テンプレートにする
- ベテランの判断の手順を整理して、マニュアルにする
- よくある問い合わせへの答えを、FAQとして整える
3つ目は、いわゆる属人化の解消にもつながります。
ここまで全体像をつかんだら、次は実際の企業がどこに使ったのかを見ていきます。

実際の企業は、AI×DXで業務をこう改善している
実名で公開されている事例を見ると、AI×DXの業務改善は「全社の作業時間」「現場の段取り」「バックオフィス」のそれぞれで成果が出ています。
(※中小企業で実名と数字まで公開された事例はまだ少ないため、ここでは公開されている企業事例を取り上げ、中小企業での応用の仕方もあわせてお伝えします)
事例①:パナソニックコネクト|社内AIで、全社の作業時間を削った
パナソニックコネクトは、自社で開発した社内AI「ConnectAI」を全社で活用しています。
たとえば、こうした業務に使われています。
- 工場で使う作業手順書の作成
- お客様アンケートのコメント分析
- プログラムのコード作成
国内社員1万人超が利用し、2024年度には業務時間を約45万時間削減したと発表されています。
従業員1人あたり、月に4時間弱を減らせた計算です。
(出典:日本経済新聞「パナソニックコネクト、生成AIツールを自社導入 年間45万時間の業務削減」(2025年7月7日、同社発表))
中小企業への応用:
規模は違っても、考え方は同じです。
たとえば「お客様への提案書の下書き」「日報の要約」「社内マニュアルの作成」をAIに任せるだけでも、1人あたり毎月数時間が浮きます。
事例②:ニチレイフーズ|熟練者の段取りを、誰でも組める形にした
ニチレイフーズは、日立製作所と共同開発したAIで、工場の段取りを自動で組む仕組みを導入しました。
ここでいう段取りとは、「いつ・どのラインで・どの商品を・どれだけ作るか」という生産計画と、「どの作業者を・どの工程に・何時から入れるか」という人の配置のことです。
これまでは熟練者が、膨大な組み合わせの中から勘と経験で決めていました。
それをAIが自動で立案できるようにし、計画づくりの時間を従来の約10分の1に短縮しました。
熟練者以外の従業員でも組めるようになり、特定の人に頼っていた状態(属人化)の解消にもつながっています。
(出典:株式会社ニチレイフーズ ニュースリリース(2020年2月発表))
中小企業への応用:
たとえば飲食店なら「明日の仕込み量と、誰が何時に入るか」、小売なら「繁忙期のシフトと品出しの順番」。
ベテランが頭の中で組んでいた段取りを、過去のやり方ごとAIに覚えさせれば、担当が代わっても回る形に近づけられます。
事例③:浜田市議会事務局|議事録づくりの「数日仕事」をなくした
島根県の浜田市議会事務局は、委員会の議事録づくりに生成AIを取り入れました。
委員会は短くても2時間、長いと5〜6時間に及びます。
従来は、録音を聞きながら職員が下書きし、別の職員が再チェックして、完成まで丸2〜3日かかっていました。
そこで生成AI(Google AI Studio)で文字起こしと整形のフローを作り、職員は仕上げと確認に集中できるようになりました。
数日がかりだった作業が、大きく圧縮されています。
(出典:Maniken(地域経営のためのあたらしいマニフェスト研究所)(2025年8月))
中小企業への応用:
会議や打ち合わせの記録も、AIに下書きさせて人が仕上げる流れにすれば、まとめる時間を大きく減らせます。
実際、AIで議事録の作成時間を8割ほど減らせたという報告も複数あります。
中小企業だからこそ、AI×DXの業務改善は効く
AI×DXの業務改善は大企業の専売特許ではなく、むしろ小回りの効く中小企業ほど効果が見えやすいものです。
「日の出みりん」で知られるキング醸造は、トライエッティング社のAI予測ツールを導入しました。
これは、プログラミングをしなくても、自社のデータを読み込ませれば使える既製のAIツールです。
このツールで、商品ごとに「来月どれくらい出荷されそうか」を予測できるようになりました。
これまでは現場の経験に頼った予測で、在庫が余ったり、欠品が起きたりしていたといいます。
AIの予測をもとに生産量を調整したことで、在庫の山と欠品を抑え、予測にかかっていた手間も減らせたそうです。
(出典:AIsmiley「日の出みりん、出荷予測にAI活用。在庫過多や欠品問題解消へ」(2023年8月))
自社で大がかりなシステムを開発したのではなく、すでにあるAIツールを取り入れただけ、という点がポイントです。
もう一つ、ぐっと小さな規模の例もあります。
ソフトウェア開発を手がける、従業員約20名のアンビックスという会社です。
専任の法務担当がいないため、大手との契約書チェックを社長自身が行っていました。
そこで、法務に特化したAIを導入し、契約書の条文チェックや修正案づくり、法改正への対応までを任せられるようにしました。
その結果、確認の負担が大きく減り、「法務担当が一人増えたような」状態に近づいたと報告されています。
専任を置けない仕事を、AIで補う。
人手の限られた中小企業ほど、効きやすい使い方だと感じています。
需要予測の具体的な進め方は、別の記事で詳しくお伝えしています。
【関連記事】AI需要予測で来月の売上を先読みする方法|中小企業がAI×DXで仕組み化する経営の作り方
業種別に見る、AI×DXの業務改善の活かし方
業種によって、最初に効く使いどころは変わります。
中小企業に多い5つの業種で、はじめの一歩になりやすい使い方を整理します。
小売・EC
- 商品説明やセール告知の文章づくり
- お客様レビューをまとめて、改善点を洗い出す
- 在庫データから、売れ筋と発注量を読む
- 問い合わせメールへの一次返信の下書き
飲食店
- SNS投稿やメニュー紹介の文章づくり
- 仕込み量や発注量の見立て
- アルバイト向け接客マニュアルの作成
- 口コミへの返信文の作成
建設・工務店
- 見積書や報告書の下書き
- 現場写真の整理と、作業日報の自動作成
- お客様への提案資料づくり
- 過去の図面や仕様書の検索と要約
製造業
- 受発注データの入力と照合
- 作業手順書・マニュアルの整備
- 取引先向けの提案資料の下書き
- 問い合わせへの一次返信の下書き
クリニック・介護
- 予約や問い合わせの自動応答
- 診療記録・介護記録の入力補助
- 再来院や定期受診のリマインド
- 患者さん・利用者さん向けの案内文づくり
みちしるべが中小企業の現場で実装したAI×DX事例
ここまで他社の事例を見てきましたが、弊社が実際に中小企業の現場で支援した事例も、もう少し具体的にご紹介します。
「うちでもできそう」の解像度が、少し上がるかもしれません。
議事録づくり|会議のあとの30〜40分をなくした
- 課題:
会議のたびに、議事録の作成へ1回あたり約30〜40分かかっていた - 施策:
記録を自動化し、Notionへ自動で集約して、後から一覧で振り返れるようにした - 変化:
内容を確認する5分前後で済むようになった
書く作業から、決めたことを実行する側へ、時間を回せるようになりました。
【成功事例】住宅リフォーム会社|社長一人の使い方を、全社の力にした
社長一人が使っていたAIへの指示文(プロンプト)を社内で共有したところ、ブログ記事の作成時間が約3分の1になりました。
この状況を整理すると、次のように見えてきました。
- 原因:
AIをうまく使える人が社長一人に偏り、その使い方が社内で共有されていなかった - 必要だったアクション:
個人の使い方を、誰でも呼び出せる「会社の型」にすること
そこで弊社は、いきなり全社へ広げようとせず、よく使う型をためる → 共有する → 呼び出しやすくする、の順で進めました。
具体的には、次の3つです。
- 1. 社長が使っていたプロンプトを、Notionのプロンプトライブラリに集約した
- 2. ブログ・メール・提案文の3つをテンプレート化した
- 3. よく使う型は、キーワード一つで呼び出せるように整理した
これらの取り組みを続けた結果、次のような変化が出ました。
- ブログ1本の作成時間:
約90分 → 約30分(期間:3ヶ月、スタッフ5名の会社を想定) - 変化:
スタッフ全員がAIを使えるようになり、文章の品質も揃ってきた
改善できた理由は、社長個人のスキルを「会社の資産」に置き換えたことにあります。
よく使う指示を型として残したため、人が変わっても同じ品質で書ける状態に近づきました。
属人化していたノウハウが、チーム全員の手元で動く仕組みに変わったわけです。
広告レポートづくり|22社分・440分を約1分にした
- 課題:
広告運用を代行するなかで、22社分の広告レポート作成に毎月440分かかっていた - 施策:
分析・改善提案・次月アクションまでを、AIエージェントで自動生成するようにした - 変化:
作成時間が440分から約1分になり、作業時間を約99.7%削減した
空いた時間を、改善の設計にあてられるようになりました。
LPと広告の監視|止まったら、すぐ気づける形にした
- 課題:
17〜20社分の広告停止・LP停止の確認に、手作業で時間がかかっていた - 施策:
監視エージェントを導入し、異常があったときだけ知らされる仕組みにした - 変化:
確認作業が約1分で済むようになり、停止の見落としを防げるようになった
これらに共通するのは、AIを「個人の便利な道具」で終わらせず、会社の仕組みに組み込んだ点です。
だからこそ、担当者が代わっても回り続けます。
うちの会社はどこからAI×DXを始めるべき?
業種が違っても、共通しているのは「今いちばん手が回っていない業務」から小さく始めることです。
ただ、手が回っていない業務を効率化できても、それが時間やコストの余裕につながらなければ、優先順位はそこまで高くありません。
大事なのは、一度業務を分解して「何が必要で、何をやめていいのか」を整理したうえで選ぶことです。
その際は、次の3つの視点で選ぶのがおすすめです。
- AIの得意なことか
- 効果が見えやすいか
- 時間がかかっている業務か
こうした目線を持って、取り組む業務を選んでいくとよいと思います。
そのために欠かせないのが、業務の棚卸しです。
【関連記事】AI導入前の業務棚卸しのやり方|削減効果が変わる優先順位の付け方
AIは「入れる」だけでは、もったいない
業務改善で本当に大事なのは、時間を短くすること自体ではありません。
空いた時間を、次の一手に回せるかどうかです。
議事録で考えてみます。
録音して、文字起こしをする。
ここまでなら、すでに多くの会社が始めています。
でも、その記録を後から誰も見返さない、決まったことが次の行動に変わらない。
これでは、せっかく浮いた時間が活きません。
大事なのは、AIで浮いた時間を「決めて、動く」ほうに移すことです。
たとえば、議事録づくりに使っていた時間を、お客様への提案や、集客の改善に回す。
そうやって、業務改善が売上や利益につながっていきます。
ここで効いてくるのが、仕組みにするという考え方です。
うまくいった使い方を、誰でも・いつでも呼び出せる型にして、担当が代わっても回るようにする。
さらに、外部に頼り続けなくても、自社のメンバーだけで回せる状態まで持っていく。
弊社が大切にしているのは、まさにこの部分です。
AIを入れるところで終わらせず、組織が自分たちで回せる仕組みになるまで伴走する。
これが、単なるツール導入との一番の違いだと考えています。
追いかけるのは、減らした作業時間そのものではありません。
その時間が、最終的に利益に変わるかどうかです。
ここまで読んだあなたへ
今回お伝えしたかったのは、AI×DXの事例を「自社の業務なら、どこに当てられるか」に置き換える見方です。
ただ、最初に手をつける場所は、業種や今の体制によって変わってきます。
- 毎日のくり返し作業に、時間を取られている会社
- ベテラン頼みで、特定の人にしか回せない業務がある会社
- 会議や報告の記録づくりに、手が回っていない会社
——これによって、「最初に手をつける1つ」がまったく変わります。
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よくある質問
Q1. 中小企業がAI×DXの業務改善を始めるなら、何から手をつければいいですか?
まずは時間がかかっている1つの業務を選ぶのがおすすめです。
議事録の下書きや、くり返しの事務処理など、効果が見えやすい作業から小さく試すと、社内の納得も得やすくなります。
Q2. 専門のIT担当がいなくても運用できますか?
少人数でも始められます。
今のAIは日本語で指示できるため、専任の担当がいなくても、社長や既存のスタッフが日々の業務の中で使えます。
Q3. 費用はどのくらいかかりますか?
文章作成や簡単な自動化なら、月数千円程度の汎用ツールから試せます。
本格的に仕組み化する場合は別途費用がかかるため、まず小さく効果を確かめてから広げるのが現実的です。
Q4. 自社の業種でも、AI×DXは使えますか?
小売・飲食・建設・製造・クリニックなど、業種を問わず使いどころはあります。
大切なのは、自社で時間がかかっている業務に当てはめることです。
Q5. AIを入れても続かない、と聞きます。どうすれば定着しますか?
担当者個人の使い方で終わらせず、手順やルールを決めて会社の仕組みにすることが大切です。
うまくいった使い方を型として残せば、人が変わっても回り続けます。
まとめ
中小企業のAI×DXは、実例を見ると「文章・事務、現場の段取り、数字の活用」から成果が出ています。
キング醸造のように、大企業でなくても、手元のツールで成果を出せます。
大事なのは、入れて終わりにせず、仕組みにして定着させることです。
追うべきは作業を減らすこと自体ではなく、空いた時間が売上ではなく利益に変わるかどうかです。
まずは1つの業務から、AI×DXで現場の余裕をつくる一歩を試してみてはいかがでしょうか。






